『新時代の経済思想家によせて』(2) 天川貴之
例えば、マルクス主義の経済思想においては、「資本家は労働者から搾取しているから豊かなのである」という見地から階級闘争の理論が導かれたが、これもまた、有限なる尺度で人間を考え、社会を考えた結果である。
しかし、人間とは、その心の奥に無限の豊かさを持っているのであり、社会全体も無限に豊かになる可能性を持っているのである。
故に、豊かな人というものは、それだけ自らの心の奥より豊かさを汲み出し、これを地上に顕現せしめえた人であるのであって、その豊かさは、周りの人々を潤し、社会全体を潤すことによって得られたのであるから、彼らをこそ祝福し、感謝しなければならないのである。
例えば、エジソンという方が電球を発明したおかげで社会全体がどれだけ豊かになったことであろうか。確実に、エジソンが生まれる前と生まれた後では、人類全体の豊かさが増大しているのである。
これは、他の社会的イノベーションでも同じである。例えば、分業というものによって、全体の生産性が飛躍的に向上するということを、アダム・スミスが経済理論として述べておられるが、この分業というものが生み出されたことで、どれだけ人類全体が豊かになったことであろうか。
また、優れた経営者をとってみても、アンドリュー・カーネギーやヘンリー・フォードやロックフェラー、また、日本では、松下幸之助や豊田英二や本田宗一郎などが生まれることによって、彼らの人材の使い方、時間の投資の仕方、お金の投資の仕方などの工夫によって、確実に、その会社の豊かさのみならず、国家の豊かさ、世界全体の豊かさが押し上げられているのである。
(つづく)