「新時代のマルチメディアクリエイターによせて」(3) 天川貴之
それはすなわち、マルチメディア社会においていかに人間性を向上させてゆくソフトを開発してゆくかということに創意工夫をしてゆかなければならないということでもあろう。
人間性を向上させるソフトのアイデアとは、それは、人間の精神の奥の奥なる叡智の世界から湧き出でてくるものである。
仏教において、人間の本質に仏性というものがあり、その中に仏へと到る無限の悟りの階悌があることが仏典の中に記されているが、まさしく、この叡智の世界がすべての人間の中には埋蔵されているのであり、その中には、人間性を向上させる無限のアイデアが「般若の智慧」として潜在しているのである。
これは、西洋哲学においては、イデアの世界であるとか、理念の世界であるとか表現されているものである。
すなわち、これからのソフトの時代、アイデアの時代においては、人間の内なる無限の智慧の開発こそが、何よりも大切になってくるといえるのである。
ここに云う智慧とは、単に宗教的な叡智のみならず、例えば、エジソンの発明のアイデアのようなものや、シェークスピアの芸術のアイデアや、モーツァルトの音楽のアイデアのようなものまで、極めて幅広いものなのである。
真に、自己に内在する無限の智慧、それも質の高い叡智を開発出来た者こそが、真なる天才なのである。
一人の天才の仕事は、その時間あたりの単純労働においては他の人々とそんなに変わらなくても、真にソフト的創造的仕事においては、一万倍、一億倍にも匹敵する仕事を為されるものなのである。
(つづく)