「新時代の志士によせて」(2) 天川貴之
現代社会においては、非常に個人主義が堕落している傾向があり、個人主義の悪い面がかなり露呈してきているといえる。
本来、一人一人の主体性の確立と己の個性に見合った幸福を追求してゆくことは非常に尊いことであるが、あまりにも己の自我我欲に生きて、それでよしとする人々が増えすぎているのである。
人間は、その本質において、公への志を失った時に真の幸福感を感ずることが出来ないものなのであり、ただ単に私利私欲を追究することだけでは、本当に真剣になり、本当にやる気になり、本当に精神の充実感を感ずることは出来ないのである。
肉体的欲求は、常に小さな自分のために生きんとするが、精神的欲求は、常に公のために、より崇高なる使命のために生きることを欲しているのである。
「葉隠」の冒頭に「武士道とは死ぬ事と見つけたり。」とあるが如く、武士道とは、本来、徹底的に己が肉体的自我を抑え、公のために生きようとする精神に、その出発点があるのである。
かの明治維新の志士達が、あれだけの偉業を成し遂げることが出来た背景には、良い意味での武士道を身につけた青年達が数多くおられたからなのである。
(つづく)
by 天川貴之