「新時代の志士によせて」(3) 天川貴之
現代という思想環境は、吉田松陰の如き大志と、至誠と、熱情を有した二十代の若者や、彼に共鳴して明治維新を断行した若者達を生み出し、育てるだけのものがあるであろうか。
決して自己の精神の不甲斐なさを外なる環境の責任に帰するべきではないが、最も純粋な二十代の若さの内に、公のために、天下国家のために生ききらんとする精神の種子を育ててゆく時代風潮があまりにもないのである。
大抵の方は、青春時代を自分自身の自我我欲を動機として費して、それで当然であると思っておられるのである。
しかし、それが単なる時代の軽薄な酔いであることは、世界の現実を見、古今の歴史を見ればよくわかることである。かかる傾向は、必ずや、本来の姿へと揺り戻しがくることであろう。
現代の真なる姿とは、実は、いかなる時代に比べても、新しき時代を切り拓いてゆくに足る、数多くの志士の登場を待ち望んでいるのである。
ならば、新しき志士道を確立し、新しき精神風潮を創出してゆかなくてはならない。
(つづく)
by 天川貴之