「新時代の志士によせて」(8) 天川貴之
最後に、新しき理念的志士道精神において挙げておきたい精神理念は、寛く高い思想性である。
志とは、そもそも特定の思想を実現せんとして派生してくるものであるが、それが狭さとなって顕れることがよくある。
そして、志故に排他的になり、信念と情熱故に、敵と見えし者を排除してゆく傾向が出てくる。
この悲劇性の源にあるのは、若さ故の思想的寛容さの不足である。
かの明治維新の時であっても、尊皇攘夷の志士達が、開国派の志士達を敵視し、排除しようとされたが、その後の日本の歴史をみると、両方とも歴史的に大いに意義のあった、思想的流れであったことがわかる。
このように、同時代に、一見敵対すると見えるものの中にも、自己の信条的限定をとり去れば、本来、大切なものがあることが多いのである。
故に、実践力、行動力を武器とする志士であるからこそ、幅広く、多様な思想と多様な個性の可能性を学んでゆかなくてはならない。
理念とは、一なるものであると同時に、多様なる個性を持つものであるから、そのすべてを学ばんとする熱意を持っていただきたいのである。
(つづく)
by 天川貴之