「新時代の芸術家によせて」(2) 天川貴之
春には春にしかない独特の美しさがあり、春の雰囲気は、あたかも優しく暖かく悦びに溢れた音楽のように大自然に響き渡り、その音楽に合わせるかのように、草木や花々は春の絵画をもって身を装い、悦びと希望に満ちた躍動を彫刻として表現している。
それは大自然の呈示した「春」という理念に従った、一糸乱れぬ一大総合芸術でもある。一なる春という理念の下に、あらゆる生物がそれぞれの個性に応じて具体化しようとしているのである。
確かに、ありとしあらゆる生物は、大自然の春の声を聴き、一なる声の下に、己が生命を限りなく素直に成長させていかんとしているに違いない。
春の日には冬の雰囲気をもった何物も存在せず、すべての生物が春を醸し出すための一助をなしている姿を見ていると、大自然は全て一つにつながっており、全体としての大きな生命なのであるということがわかる。
(つづく)
by 天川貴之