「新時代の映画監督によせて」(2) 天川貴之
それでは、一人一人の人生はその人自身の芸術であって、少なくとも神の芸術とはいえないではないかとも思えるが、よくよく一人一人の人生を眺めてみると、神の法則の中で、自らの発してきた言葉と思念が、人と時と場所を違えて、自分自身に向かって、限りなく芸術的に返ってくることに気づく。
これは仏教では「業」の思想として説かれてきたものではあるが、この「業」の法則こそが、すべての人生を芸術的に観ずる時に最も大切な観点なのである。
かつて、ギリシャのソフォクレスという悲劇作家も、有名な「オイディプス王」の中で、「運命と人為」ということをテーマに戯曲を書かれていたが、まさしく、我々の人生は、すべて神の法則の下に生かされているという点において、限りなく戯曲のような人生に見えないこともない。
(つづく)
by 天川貴之
(JDR総合研究所・代表)