「新時代の音楽家によせて」(2) 天川貴之
人間の感情というものを、よくよく分析してみると、それは、言葉で出来ているというよりも、旋律に近いものであることが分かる。
このような旋律を言葉に翻訳すれば叙情詩となり、音に翻訳すれば音楽になるものなのである。
こうして考えてみると、概して、芸術作品の源は感情にあるといえるのであり、優れた芸術とは、優れた感情の産物であるといえるのである。
確かに、自らの感情を翻訳するための技術は磨かなければならないが、感情それ自身を磨くことなく、技術ばかり磨いても、自らの芸術を高度化させることにはならないだろう。
もし、音楽技術だけを整え、形式的に美しい音楽が出来たとしても、それは人々の感情を捉えることがないが故に、結局の所、駄作となってしまうに違いない。
そして、外面的なものをとりつくろえばとりつくろう程に、虚栄の音楽となり、一見、人目をひくものの、虚しい感動しか与えないものになってしまうだろう。
(つづく)
by 天川貴之
(JDR総合研究所・代表)