「新時代の経営者によせて」(4)
だから、新時代を切り拓かんとする哲人経営者達よ、すべての苦難困難を、大いなる悦びをもって受けとめてゆこう。
昨日も一日新たな智慧が増えた、今日もまた新しい智慧が増えたと、こうした日々を積み重ねてゆくことが出来たならば、あなたは確実に成長しているばかりではなく、確実に周りの人々を潤しながら生きておられるのである。
現象的な失敗も、現象的な成功も、いわば、これは食物の部分にあたるのだ。
どんなに多くの食物を食べても、それを少しも消化吸収しなければ、自分自身の血肉やエネルギーとはならないように、どんなに数多くの経験をなしたとしても、どんなに数多くの知識を学んだとしても、それに対して主体的なる思索を加えてゆかなければ、それを智慧にして、自らの内に蓄えてゆくことは出来ないのである。
だから、日々仕事を終えられてから、一日を振り返り、そこから、現象の背後に隠れている法則、理念を沈思し、思索によって、これを抽出していっていただきたいのである。
また、一ヵ月や一年に一回は、その間にあった現象を振り返って、その中から、智慧を導き出していただきたいのである。他からの借り物の知識であっては、他人を説得することはなかなか出来ないものである。
しかし、自己が真にその内なる理念の光によって思索したものは、自分自身の智慧となっているが故に、他の数多くの人々の心を打ち、その心の内に智慧を送り込むことが出来るのである。
こうした努力を積み重ねておられる方は、「永遠」を経営の中に感じられるようになられることであろう。
経営というものが物質的で虚しいと感じておられる方は、その方自身の責任なのである。内なる理念の眼を輝かせて経営を観ずるならば、そこには永遠の至福の世界が広がっているものなのである。
(つづく)