「新時代の経営者によせて」(5)
理念の世界というものは、決して現象の世界を離れて存在するのではない。あくまでも現象そのものの背後に重なり合う存在として実在するのである。
故に、理念経営者とは、決して現実から逃避するような弱者ではなくて、真に力強い最高の成功者であると同時に、最高の哲学者でもあるということに気づかれることであろう。
経営とは、本来、大いなる悦びそのものであるのだ。それは、大いなる希望そのものであり、大いなる愛そのものであり、大いなる安らぎそのものであり、大いなる至福そのものであるのだ。
物質的とみえしものは、自己が物質的であったにすぎず、虚しいとみえしものは、自己が虚しい存在であったにすぎないのである。
そして、あなたが、真実の哲人経営者の悦びのもとに人々を見渡されるようになられるならば、すべての仕事仲間の内に、あの天空に輝ける星々のような光輝かんばかりの個性の輝きが見出されてくることであろう。それこそ、一人一人の内なるかけがえのない理念の姿であるのだ。
自己が、物質的なるものばかりに眼をやっていた時には、決して、そうした姿は見えてこなかったはずである。どの人もそう変わらず、どの人も同じ時間を働く単なる従業員にしかみえなかったであろう。
しかし、一度、理念の眼をもって人々をみれば、一人一人の内なる使命が、生き生きと、現象世界へ、生まれんと生まれんとしている姿が観えてこられることであろう。
(つづく)