『新時代の哲学者によせて』(2) 天川貴之
故に、私は、現代に生きる哲学者に対して、また、未来を創っていかんとしている哲学者に対して、はっきりと断言しておきたい。現象に執われず、知識に執われず、何よりも「理念」につけと。「理念」を求めつづけることを生きる価値とせよと。
理念こそ、究極のあなたの伴侶である。いや、伴侶というばかりではなく、それが本当のあなたの姿であり、本当の世界の姿であり、実は、本当の神の姿でもあるのだ。
理念とは、永遠に近いものである。理念とは、「ありてあるもの」に近いものである。理念とは、愛そのものでもあり、美そのものでもあり、自由そのものでもあり、無限の無数なる価値を秘蔵せるものである。
しかし、まずは、何よりも自分自身に忠実になることだ。自分自身の心の奥を無限に耕していった時に、そこに現れる光満ちる宝石がある。それが、あなたの理念である。
あなた自身の理念を発見したならば、その理念を通して自己を見、他者を見、世界を見てゆくことだ。あなたが見出した理念、精神そのものの姿に対応して、自己の姿も、他者の姿も、世界も、すべてが変化してゆく。
あなたという理念は、永遠にあなたそのものとして不動不変のものではあるが、同時に、変転してゆくものでもある。あなたが、今、自己の内に発見しうる理念は、それがたとえ小さなものであったとしても、永遠のあなた自身の一部である。
この小さな光を大きくしてゆく過程こそが、あなたの精神の成長してゆく過程であるが、あなたは、変転してゆくものの中にあって、現在、ただ今放っている自己の灯をもって、その都度、すべてを認識してゆくのである。
人間の定義も、世界の定義も、善の定義も、美の定義も、すべて変転し、無限に、そして、永遠に成長発展してゆくことであろう。いや、発展してゆかねばならぬ。
しかし、今にしかつかみえない理念をつかみえるならば、しっかりと、すべてを見定めておくべきだ。その姿こそ、何者を見ようとも、本当の、その時点におけるあなた自身であるのである。
(つづく)