『新時代の法思想家によせて』(6) 天川貴之
同じくプラトンは、「哲人王」と並んで、「立法者」という理念を理想国家の中心理念に置いて大切にしておられるが、立法者というものもまた、理念を、普遍なる自然法を認識しうる哲人のことなのである。
このような優れた立法者が、理念を反映させた優れた法を創り、制定することによって、その法の下に生きる人々が、善に向けて「よく生きる」ことが出来るようになることこそ立法者の理想であり、その意味で、立法者とは、理念を知り、理念へと人々を導く最高の教育者でなくてはならないのである。
新時代が求めている法思想家とは、まさしく人類の永遠の理想の原点にある哲人立法者である。法律の中に、自然法の光ある生命を吹き込んでゆくことによって、法律の生命を蘇らせ、そのような生命ある法律によって、人々の内なる生命を呼び覚まし、そのような理念を体現した法律によって、人々の内なる理念を呼び覚まさせるような偉大な立法者である。
それは、法律を、単なる道具として手段として扱うのではなく、法律の中に、それ自体が目的であり、価値そのものであるような永遠の法を見出し、永遠の法を限りなく法律の中に具現化してゆくことを自らの天命とするような法思想家なのである。
(おわり)