「新時代のマルチメディアクリエイターによせて」(5) 天川貴之
かかる理念人類が数多く登場してくるようになると、おそらくは、大会社の組織よりは、アメーバ型のベンチャー組織の方が主流を占めるようになってくるであろう。
何故なら、理念的ソフトの開発については、かなり個人の力量が占める割合が大きくなってくるからである。
そして、天才的な個の力を最大限に生かすことの出来る組織が最も発展繁栄し、天才的な個の力を最大限に抑圧してしまう組織が最も衰退してゆくのである。
そうすれば、かつて、恐竜達が環境の変化に充分に適応出来なくなって滅んでゆき、より小型の動物が小型であるが故に栄えていったように、企業においても、小型であるが故にかえって有利な時代となるのではないだろうか。
さらには、天才的発想、理念的発想は、ある意味で年齢を超越しているので、これが新たな社会的価値の尺度になってゆけば、今の年功序列型の社会は大きく変化してゆくのではないかと思う。
かつての大変革期である明治維新の時代には、二十代の天才的若者達が最も活躍されたが、ある意味で、未来型社会には、真なる理念人類が、三十代、二十代、十代の若さで大活躍する時代となるかもしれない。
そうすると、「星の王子様」的な人間が、すなわち、理念型天才で、年若く、しかも、社会的地位と富を築いてゆくような人間が数多く輩出されてゆくことも想像にかたくない。
かかる理念人類が、新しき高度に精神的なジャパニーズドリームを次々に実現してゆくようになれば、新時代の社会は、ある意味で、プラトンなどが理想とされた理念国家に限りなく近いものになるかもしれない。
私は、かかる時代の最先端の職種を、ホワイトカラーではなく「理念(イデア)カラー」と呼び、かかる時代のことを、「理念(イデア)の時代」と名づけたい。
新しきマルチメディアの社会は、同時に、人類の究極なる理想を実現する時代であってほしい。そして、すべての人間の奥の奥なる高度な精神性が最高度に開花し、それを交流し合い、磨き、高め合うような時代であってほしい。
すべての人類が、マルチメディアを通して一つになる時代が、大いなる理念の愛の時代となることを、心の底より切に願う。
(おわり)