精神的ジャパニーズドリーム~理念の革命~

   新時代の日本のあらゆる分野において、「精神的ジャパニーズドリーム」を起こしてゆくための根本理念を提示します。

『新時代の歴史家によせて』(4)   天川貴之

 

 さらに、現在として時間、自分という空間に対する執われを限りなく空しくしてゆき、過去のすべての人物、すべての事物に対する一体感を限りなく深めていった時に、我々は、全歴史を自己自身として感じとれるようになるのである。

 自分自身という主観を超え、歴史という客観を超えていった時に、そこに、真なる我を、真に歴史と一体化し、歴史を通して、神と一体化している我を見い出すことが出来るのである。

 ヘーゲルが「絶対知」といわれたのはまさしくかかる認識のことであり、彼の歴史哲学が、一般の歴史書と大きく異なるのはもちろん、それが哲学であるということでもあるが、根本的に、彼が、「絶対知」をもって、歴史そのものを自分自身として観じ、歴史の背後にある所の絶対精神なる神と合一して観じえた所にあるのである。

 もちろん、ヘーゲルの論述された「絶対精神」とは、ヘーゲルの精神そのものでもあり、ヘーゲルの個性的限定を限定とした無限の精神の一端であることは事実ではあるが、彼が、小さな自我を去り、大いなる精神と合一して歴史を語ろうとされたことは、大きな価値を我々に呈示してくださるものである。

 ヘーゲルは、哲学史の講義をされる前置きとして「私は、真理を語るだけではなく、私自身が真理そのものであるのだ。」と語られたそうだが、これは彼が自己を過大評価されて口をすべらせた言葉ではなくて、彼の歴史認識を最も端的に表わしている所の実感を率直に語られたものなのである。

 

(つづく)