「新時代の小説家によせて」(6) 天川貴之
これらの連綿たる崇高な大芸術が、決して偶然には、これ程の統一性をもって出来ないということは、我々が決して偶然に一つの大小説を書くことが出来ないという以上のことなのである。
このような人為を超えた大芸術は、時空を超えて、様々な所で描かれている。
神話としては、ギリシャのゼウス神を始めとする神々の物語が伝承されており、日本においても、天照大神を始めとする神々の物語が伝承されている。
そうした古代のものはおいたとしても、例えばギリシャのソクラテスの一生は、プラトンの「ソクラテスの弁明」等を読んでみても、そこに比類なき芸術性を放っているものである。
それによると、ソクラテス自身は、常に内なるダイモンという守護神の導きを行動の基とされていたが、刑死される以前にそのダイモンが「逃げよ」と言われなかったので、それを神の命、自らの運命と知って、従容として死んでいかれたのである。
(つづく)
by 天川貴之
(JDR総合研究所・代表)