『新時代の経済思想家によせて』(7) 天川貴之
さらには、理念的天才を育てる政策も理想国家建設には欠かせないことになろう。
天才の本質とは、理念を把握出来ることにある。そして、その仕事が理念的仕事であるが故に、時代を超え、永遠的に、人々を感化しつづけ、地域を超え、無限の人々を感化しつづけ、その精神に至高の糧を与え、時代と社会を根源的に良き方向へと変革してゆくのである。その仕事量たるや、一人で一万人分、一億人分、いや、それ以上の価値ある仕事をされることもあるのである。
しかしながら、今までの経済環境においては、それが超時代的であり崇高すぎるが故に、人々にその仕事の理念価値が理解してもらえない時には、その天才は経済的に不遇となり、天才を伸ばすための基礎力が充分に得られないということが数多くあったといえよう。
こうした歴史的教訓から学び、特定の理念的見識のある方々が、天才、もしくは天才的作品であると認定したならば、その理念価値に見合うだけの経済的援助を積極的に行ってゆくべきであろう。
かつてのギリシャ時代やルネッサンスの時代など、時代精神が勃興するという時には、どれだけその時代を生きる天才達の理念の才能を最大限に開花させることが出来るか、ということが大きな課題となるし、このことは、現代においても、新時代に向けて、非常に重大な課題となっているといえるであろう。
もちろん、かかる理念需要の創出や理念天才の育成などについては、現代において非常に経済力と社会的影響力を有している企業そのものにも求められていることでもあろう。最高の公的奉仕とは、理念への奉仕である。なぜなら、理念への奉仕は、普遍的永遠的な人類への奉仕につながるからである。
理念社会の実現は、理念国家と理念企業と理念天才、そして、理念経済思想家が一体となって、協力し合ってこそ生まれてゆくものである。理念の時代の先触れとして、かかる経済思想を高らかに掲げる「理念の革命」の旗ふり役を、天は確かに要請されているのである。
(おわり)