「新時代の志士によせて」(5) 天川貴之
古来の武士道においては、勇気や情熱というものは、決死の覚悟から生ずるものであるとされることが多かったが、これは、逆の意味で、肉体に対して執着しているともいえるのである。
肉体的な生に執われることも執着ならば、肉体的な死に執われることもまた執着である。故に、そこに独特の悲壮感が漂うのである。これは、悲しみの執着がそこに人格的雰囲気となって現れているのである。
人間が地上的なる執着から真に離れるためには、自己の内なる理念をこそ、志向しなければならない。
理念においては、真に小さな肉体自我を超え、自己と他者、自己と国家、時代、世界が一体となる。
理念の自己に生ききる時、自ずから公のために生ききることが出来るのである。
そして、理念に生きんと決意すればする程に、心の奥の奥から、ふつふつと無限の情熱、無限の勇気、無限のエネルギー、無限の悦びが湧いてくるようになるのである。
理念とは、あらゆる無限力の源であり、この理念と一体となって生きることこそ、永遠なる普遍なる志士として生ききるための真髄なのである。
(つづく)
by 天川貴之